仕事で未来をよくしたい。そんなママのきもちから生まれた会社です

2012年に創業したエムズ。会社の同僚として出会い、社内起業時代からともに歩み、ときどき転びながらも前に進んできた、代表・柴木と社員・中村の2人がエムズのこれまでを振り返ります。

−−エムズを起業したきっかけは何ですか?


(柴木)起業の原点は、会社員時代の体験にあるんです。
わたしはソフトウェアハウス出身ですが、業界自体が残業ありきということもあり、女性は出産を機に辞めるのがあたりまえになっていました。じつはわたしも一人目を出産するまでは、仕事を辞めるかもと思っていたんですよ。

ところが、いざ子どもを産んだら、きもちはまったく違うものに変わっていました。お母さんとして、自分の仕事で未来をよりよくしていきたい・・・!そんな壮大なきもちが沸いてきて。「わたし、仕事が好きなんだ」と、気づかされました。

育休後、ふたたび会社に戻って仕事を続けるなかで、自分と同じようにママになった社員がどんどん辞めていくのを目の当たりにし、すごく寂しかった。と同時に、やる気のある人が続けられないことを、本当にもったいないと感じて。なんとかこの状況を変えたいと思ったことが、起業の最初の一歩だったんです。

そこで社内起業というかたちで会社に提案し、子育てと両立できる部署を作ったのですが、利益が出せず半年で解体の危機に。
じゃあ次どうする?という窮地に立たされたとき、「独立して自分で会社をやってみたら」と背中を押してくれる役員がいて、起業を決めました。

−−そこに、同僚であった中村さんも加わった。

(中村)わたしは、社内起業で柴木といっしょに活動して、部署が解体になるときには第二子を妊娠中でした。
結果として社内起業では居場所を作ることができなかったし、出産後はもう戻れないぞ、という空気のなかで産休に入ったんです。
 
 
(柴木)そうしたら、起業を後押ししてくれた役員が、「柴木ひとりではあいつはサボるから行ってやれ」と育休中の中村に助言してくれて。
じつは起業したものの、ぜんぜん稼げていなかったので、誰かを雇うなんて考えられなかったのですが、ひとりでやっていたら終わってしまうからダメだとアドバイスされ、「わかりました」と覚悟を決めました。
中村は、それはそれは不安だったと思います。
 
 
(中村)不安というよりは、入るからには仕事を作らなければ!という思いが強かったですね。わたしが入ることで何ができるかを示さなければ、と。
そこで、育休中の体験から考えついたアプリの企画を提出しました。そのアイデアから出発し、エムズの最初の商品としてリリースしたのが「さくっとアルバム」です。デジカメやスマホで撮った写真を簡単にアルバムにできるアプリでした。

−−初めての商品はどうでしたか?


(柴木)すごくいいアプリができた!これでわたしたち大丈夫!と一瞬夢を見たけど、2人ともお金の計算できていなかった(笑)。収益するための設計が不十分で、事業としては大コケでした。

でも、この開発と失敗では、得るものもすごくあって。
というのは、会社をスタートして、働き方や仕事を見つめる時間でもあったわけで。せっかくこんなに小さな会社で仕事をするのだから、中村にはとことんやりたいことに熱中してほしいし、わたしも毎日きもちよく働きたいし、そのためにどうしたらいいのか模索しながら仕事を作り上げていく、だいじな時間になったと思っているんです。


それから、このアプリを形にしてくれた凄腕のエンジニアさん・デザイナーさんとの出会いもすばらしい財産になりました。当初は自分たちで作ろうとしていたのですが、ちっともできなくて。
考え方をシフトすれば、驚くほど仕事が進むということも学びのひとつでした。


コケたままでは終われない!踏ん張る日々

−−それから、どう立て直していかれたのですか?

(柴木)まずは出稼ぎです(笑)。コケたままでは食べていけないので、先にわたしがクライアント先で受託業務をはじめて、中村も育児が少し落ち着いたところで現場に出てくれました。
 
 
(中村)わたしはそのとき「ようやく稼げるなー」と心底ホッとしましたね。
ブログ「さくっとふぉとらいふ」もすでに始めていたのですが、当時は広告収入を得ていなかったし、アプリも失敗したし、なんて自分はお金にならないんだ・・・と悶々としていたので。
 
 
(柴木)そこは、中村がいてくれたことで会社が続いたと思っていますから。
「まずはごはんが食べられるようにしなきゃ!」って踏ん張るきもち、きっとひとりでは保てなかったです。
 
 

−−二人三脚で次に向かっていかれたのですね。


(柴木)2人で受託業務で売上を作りながら、中村のブログも収益につながるように整えて、戦略を練りつつ、次なるアプリに向けて動き始めました。
 
 
(中村)「さくっとアルバム」でアプリの土台はできたし、チームもできたし、次はコンセプトを切り替えていこうと2015年3月にリリースしたのが、「さくっとシークレット」。人に見せたくない写真や動画を隠しておける鍵付きのアルバムアプリです。アルバムを“作る”ためにお金を出してもらうのは難しくても、写真を“守り大切にする”ことには、ユーザーはお金をかけるのではないかという狙いで設計しました。
 
 
(柴木)これはおかげさまで人気アプリに育ち、今では収益も出ています。100%ではないけれど、「アプリでやっていける!」という自信を、初めてわたしたちに与えてくれた商品ですね。


3つのMを道しるべに自信をつけてきた

−−苦しい時期もありました。それでも笑顔で続けてこられた秘訣は?

(柴木)エムズって、3つのMから由来していて、その3つのMがいつもわたしの道しるべなんですよ。

1つめは「ミネルバ(Minerva)」のM。知恵の女神ですね。エムズの原点である社内起業時代のチームが「ミネルバ・ラボ」であり、実現したいことに対して知恵を出す姿勢を大事にしたいという思いもあって、掲げています。

2つめは「笑む」のM。お客さんが喜んでくれて、わたしたちも嬉しくてにっこり笑顔になる、そんな仕事をしたいねという思いがあります。

そして3つめは「マザー(Mother)」のM。お母さんになった瞬間に芽生えた「未来をよくしたい」というきもちを、いつまでも大切にしたい。自分のこの仕事は未来をよくするか?といつも問いかけ、丁寧に仕事をしようという決意を込めています。

この3つのMに立ち戻ることが、悩んだとき、迷ったときの助けでもありました。
 
 
(中村)あとはやはり、「何もない」というスタートから、丁寧に仕事を積み重ねて、知識や経験を蓄えてきたことで、自分たちに少しずつ自信がついてきたから乗り越えられた面もあるのかな、と。
「さくっとアルバム」で失敗したときに、「次にいこう!」と舵を切って進めたのは、自信がついていたからできた決断だったと思います。
 
 
(柴木)そして、まもなく新しい写真アプリをリリースするのですが、これがまたやけに自信がありすぎて。中村は心配しています(笑)。


次の記事では新商品アプリ「さくっとプリント」とエムズの写真へのこだわりをご紹介します》

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  聞き手・文 / 横山さと   フリーのライター&イラストレーター。「働くこと」や「家族」をテーマにした執筆・イラストを多く手がけています。自身も1児の母。 今回の取材では、飾らず気取らず真摯に、お母さん2人が工夫しながら仕事を楽しむ姿、そのパワーが素直に伝わってきました。   企画・編集・ライティングチーム TypeSlow(タイプスロウ)